【3級】物的控除
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各論点の学習を進める前に、しっかりと、所得控除の位置づけを意識してください。
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所得控除の位置づけと意味合いを、所得税の体系図で確認しておきますと、まず、所得税というのは「個人の正味の儲け」(正確には、課税所得)に対してかかる税金です。
そして、個人の正味の儲けとは何かと言えば、「個人の正味の稼ぎ」(正確には、課税標準)から、「生きていくためにどうしても払わなくてはいけないお金」を引いた金額です。
イメージとしては、個人が自由に使えるお金だと思って下さい。
この、生きていくためにどうしても払わなくてはいけないお金というのが、所得控除の事で、体系図で言うと、真ん中の上に位置します。
正味の稼ぎに当たる課税標準から、所得控除を引くと、正味の儲けに当たる課税所得を求める事ができる、という仕組みです。
例えば、給与所得が1,000万円であるAさんが、その年に300万円の宝石を盗まれたとすると、いくらに対して税金をかけるのが適切でしょうか?
「所得税は個人の正味の儲けに対してかかる税金である」という趣旨に沿って考えてください。
このような視点で考えてみますと、Aさんは1,000万円儲けて、300万円損していると言えます。
そこで、所得の金額1,000万円に対して課税するのではなくて、資産の損害300万円を引いた、700万円に対して課税するべきだと考えます。
つまり、災害や盗難や横領によって、資産に損害を受けた場合、一定金額を課税標準から引く事ができるという訳です。
このような所得控除を、雑損控除と言います。
なお、詐欺や恐喝による資産の損害は、雑損控除の対象外です。
詐欺や恐喝は、災害や盗難等と違い、納税者にも非がありますし、騙されたと嘘をついて脱税する人が居ると、課税の公平性を損ねるからです。
医療費控除は、本人やその一定の親族のために払った医療費を、生きていくためにどうしても払わなくてはいけないお金だと考える所得控除です。
なお、医療費控除の対象となる支出は、お金を払った日が基準です(療養を受けた日ではありません)。
その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費が対象とされていますから、去年の入院費用を今年に支払った場合、そのお金は、今年の医療費控除の対象となります。
控除額は、基本的には、正味負担した医療費(窓口で支払った医療費-保険金などで補填される額)から10万円を引いた金額で、最高200万円であると思って下さい。
医療費控除は、対象となるものとならないものが似ていますので、注意が必要です。
基本的には、「治療」がキーワードで、治療に該当すれば医療費控除の対象になり、治療に該当しなければ、医療費控除の対象にならないと思ってください。
<医療費控除の対象となるものの例> | |
・ | 入院費 |
・ | 入院の際の食事代 |
・ | 歯の治療費 |
・ | 薬代 |
・ | レーシックやインプラントの技術料 |
・ | 先進医療の技術料 |
<医療費控除の対象とならないものの例> | |
・ | サプリメントのような健康促進のためのお金 |
・ | 美容目的の手術のお金 |
・ | メガネやコンタクトレンズの購入費用 |
なお、人間ドックや健康診断の費用は、基本的に、医療費控除の対象となりません。
なぜなら、治療ではなく、予防のためのお金だからです。
但し、診断の結果、重大な疾病が発見されて、引き続き治療を行った場合には、健康診断などの費用も治療の一部と考えられて、医療費控除の対象になります。
医療保険の給付の対象ではなくても、治療であるものは、医療費控除の対象になります。
<セルフメディケーション税制>
セルフメディケーション税制は、国民の健康維持を促して、医療費を抑制する事を目的とする制度です。
普段から健康の保持増進及び疾病の予防のために一定の取組を行っている人が、軽い病気になった時に、医者にかからずに、OTC医薬品(いわゆる、市販薬)を買って症状を緩和するならば、税金を安くする(所得控除を認める)、というものです。
薬代が12,000円を超えると、超えた金額が医療費控除の対象となり、最高88,000円まで控除を受ける事ができます。
なお、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は、同時に適用を受ける事ができません。
社会保険料控除は、国民の義務として強制的に徴収されるお金を、生きていくためにどうしても払わなくてはいけないお金だと考える所得控除です。
控除の対象となるものには、医療保険・介護保険・公的年金の保険料が該当します。
間違えやすいものとしては、
国民年金の付加保険料は、社会保険料控除の対象となります。
国民年金基金の掛金は、社会保険料控除の対象となります。
確定拠出年金の掛金は、社会保険料控除の対象となりません。
なお、控除の対象となる金額は、支払ったお金の全額です。
また、本人やその一定の親族のために払ったお金は、控除の対象となります。
ライフプランニングと資金計画の分野では、国民年金基金は、任意加入という意味で私的年金に含めて説明しましたが、制度自体は公的なものですから、国民年金基金の掛金は、社会保険料控除の対象になります。
小規模企業共済等掛金控除は、老後に備えて蓄えるお金を、生きていくためにどうしても払わなくてはいけないお金だと考える所得控除です。
公的年金だけでは、国民の老後を保障する事が難しいので、老後のお金を用意する人を応援する制度を作って、老後のための自助努力を促しているという背景があります。
控除の対象となるものには、小規模企業共済の掛金や、確定拠出年金の掛金があります。
なお、控除の対象となる金額は、支払ったお金の全額です。
生命保険料控除は、万が一に備えて加入する生命保険の保険料を、生きていくためにどうしても払わなくてはいけないお金だと考える所得控除です。
生命保険会社に保険料を支払うと、保険の種類別に、一般の生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除のどれかの控除を受ける事ができて、2012年1月1日以降に契約が開始する保険の保険料は、どの区分でも最高40,000円の控除を受ける事ができます。
ですから、3つ全てについて限界まで適用を受けると、最高12万円の控除を受ける事ができます。
ちなみに、複数の期間分の保険料を一時払いした場合、全額が保険料を支払った年分の控除対象になります。
地震保険料控除は、万が一に備えて加入する地震保険の保険料を、生きていくためにどうしても払わなくてはいけないお金だと考える所得控除です。
控除額は、支払った金額の全額ですが、上限は50,000円までです。
なお、店舗併用住宅の地震保険料を支払った場合、居住用部分にかかる金額のみ地震保険料控除の対象となります。
ちなみに、生命保険料控除とは異なり、複数の期間分の保険料を一時払いした場合、その年分にかかる金額のみが、控除の対象になります。
寄付金は、生きていくためにどうしても払わなくてはいけないお金ではありませんが、寄付を促す目的で、所得控除の対象となります。
控除額は、基本的には、支払った金額から2,000円を引いた金額です。
但し、寄付先は、国や地方公共団体など、一定の対象に限定されます。
なお、ふるさと納税を行った金額も、寄付金控除の対象となります。
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